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天帝のデストピア

第三章:“フェアウェル”

01.灯

 

切り刻んだ
記憶の束
繋がってまた熔ける
その鼓動が
動きを止め
光を無くしてそれでも灯――

影もない夜が襲う
足音は届かないまま

争う天使たち最期の刻へ from dystopia

汚れきったその掌
振り切ってまだ残る
この世界が
『いのち』をやめ
光を無くしてそれでも灯――

君が知る愛の光
その味甘さに溺れてみたい

残酷な夢は覚めることない to utopia

切り刻んだ
記憶の束
繋がってまた熔ける
その鼓動が
動きを止め
光を無くしてそれでも灯――

永遠とは憧れだけの形亡き者
良く似た色の光の名を君は知っている

夢見ていた
いつの日にか
二人で歩む永久
哀しい唄
その旋律
仕組まれたものとしても

切り刻んだ
記憶の束
繋がってまた熔ける
この世界が
『かたち』をやめ
光を無くしてそれでも灯は――

決して消えない


02.フェアウェル

 

フェアウェル
君がそばにいる
この僅かな時間で
僕が手に入れたもの
フェアウェル

フェアウェル
この新しい世界は
もう慣れたかい?
一秒でも長く
フェアウェル
永遠が続くといいな
ここはユートピアではないけれど

愛に溢れている

明日もし大きな大きな彗星が
この星にやってきて
夢と未来と僕と
地下室の扉とかも
全部無かったことにして
キスをしよう
フェアウェル

フェアウェル
雪の舞う街に
幸せが降り注ぐ
昔の昔のおとぎ話
フェアウェル
二人信じては
窓の外を眺め泣いて笑った日々は

愛に溢れていた

やがて来る世界の果てに
君も僕もいなくても構わない
今宵も響く羽根のない天使たちの宴の声
束の間の安らぎが
降り積もれば
フェアウェル

悲しみに怯える夜は終わった
ここはまだどこでもない
全てが灰に変わった
真っ白な真っ白な
Snow is falling
War is over

これから生きる天使たちは
この世界をどんな色に染めるだろう

明日もし大きな大きな彗星が
この星にやってきて
夢と未来と僕と
地下室の扉とかも
全部無かったことにして

愛も夢も希望も
雨も雪も風も太陽も
海も空も月も
昨日も今日も明日も
ふたり思い出の寝台も
全部無かったことにして
ふたりだけの世界で僕ら
キスをしよう

フェアウェル


03.ノーナの白昼夢



もしも時計をぐるぐる回し遡れるのなら
ふわりふわりと白い空から雪の舞う季節を
君と歩こう
夢のような――白

僕の目の前に現れたのは悪魔を名乗る者
やけに美しい少女のような姿をしていただろう


「時の魔法を
あなたに教えよう」

そこは願いの叶う場所
刹那君の声が微かに漏れ
降り積もったはずの雪が
やがて空へ向かって舞い上がる

「私と歩こう
夢のような――白」

目を閉じて

そしてふたりは永遠の街歩き続けていた
指を絡めれば疲れることを思い付きもしない


どこまで行こう
いつへ遡ろう

君といた季節は儚
ふたりずっとずっと夢の中
心の奥秘めた秒針を
独りそっとそっと巻き戻す

消えてゆく世界
どこまでも堕ちてゆく
君と出会う前
心は戻せない

どこまでも何もない白
時も場所も記憶も自分さえも
隣にいた君の顔も――
――ずっと僕はひとり?

そこは願いの叶う世界
僕は声をあげた魔法の言葉
降り積もったはずの雪が
やがて空へ向かって舞い上がる

もう一度歩こう
夢のような――白

目を閉じて

もしも時計をぐるぐる回し遡れるのなら
ふわりふわりと白い空から雪の舞う季節を


04.第三次ボーカロイド大戦

 

なぁ、嘆いているんだろう
なぁ、この現実に
なぁ、燻っているんだろう
なら、旗を翻せ

 

旧式の拙い頭部に付いたスピーカー
片言の無表情「僕は味方だ」

さぁ戦争を始めよう
最初から勝敗のついた出来レース
終わらせろ塗り潰せ
その拳で殴り合え

正解はどこにもない
ここにいる全員がファイナリスト
馴れ合いも妥協もない
完全実力主義ランク

「さぁ全員スタートライン位置について
腰ぬけはGO HOME
ガナる号砲が鳴る合図
サプライズ贈られるプライズです
プライスレス」

一行に始まらんレース
日光に焼かれてるケース
参考にまるでならねーです
なにやら外が騒がしい

砂漠の惑星より出でし古代モンスター
僕らが求めてるのは「お前なんかじゃない」

さぁ戦争を始めよう
手に取るウエポンは手前次第フリーダム
信じるは己のみ
その耳で確かめろ

誰でもない君だけが
君だけの音楽を奏でられる
名前のない者達よ
胸の槍を手に取れ

どこで眠っているんだ
何を怯えているんだ
悔しくないのか
暴れ放題の古代モンスター
手も足もでないそんな時代
終わらせようこの聖戦で

さぁ戦争を始めよう
最初から勝敗のついた出来レース
終わらせろ塗り潰せ
その拳で殴り合え

革命の始まりだ
ここにいる全員がファイナリスト
現実も夢も見ろ
正解も間違いもない

誰でもない君だけが
君だけの音楽を奏でられる
名前のない者達よ
胸の槍を手に取れ


05.世界樹の種

 

どんな色をした花びら開くだろう?
夢を見ていたの
あなたが作る世界

晴れ渡る今日の青も
明日は色んな色の咲く空になれ

白い世界に蒔かれた種は
やがてどんな花を咲かせ
私に見せてくれる?
鮮やかな水をあげよう

降り注ぐ雨、吹き荒ぶ風に
決して負けぬように
いずれは涙も土に溶けて
少女よ大樹となれ

暗い闇が瞳を覆う
そんな夜も過ぎて
少女は心に世界を作る
たったひとつの彩りの物語

白い世界に蒔かれた種は
やがてどんな花を咲かせ
私に見せてくれる?
鮮やかな水をあげよう

降り注ぐ雨、吹き荒ぶ風に
決して負けぬように
いずれは涙も土に溶けて
少女よ大樹となれ


06.雪華と願いのダスエンデ

 

巡る時の欠片ひとつ
白く暴く躯の
甘き調べ

限りある歯車の
城でふたり触れ合う庭

永遠の夢
終わりなき恋
あなたは変わってゆく
人形のわたしだけ
あなたを知るの

求めていた時間も
やがては雪とともにDas Ende...

愛おしいほど叶わぬ願い
わたしの薇は
あなただけがまわすの
そのくちづけで


07.まだ愛の名を知らない

 

あなたの指がなぞるピアス
吐息に曇る夜
グラスに残る赤い果実
見覚えのあるルージュ

浮かぶ月は笑う二人を

震える声愛を求め
行場もなく
その形さえ知らず
傷を嘗めあう

明くる朝さえ来なくていい
火傷の痕に染みる
見合わせもせず扉の音
やがて恋と知った

閉じるページ夢の終わりを

忍び寄る孤独の影
怖れるほどに
闇を灯すあなたの
鼓動の音

……聴こえない

浮かぶ月は笑う二人を

震える声愛を求め
行場もなく
その形さえ知らず
傷を嘗めあう

時は私を残し
全てを変え
それでもまだあの日の
愛の名前を

……知らない


08.アリスの世界地図

 

夢の中君と出逢う
何もない地図の上で
影さえも映らなくて
僕はただ名前を呼ぶ

真っ白な、真っ白な世界地図
降り積もる雪のような君との調べ
その先へその先へ歩いてゆこう
新しい僕たちの地図を描こう

夢は醒め明けた朝に
君はもう消えていたね
何気ない日々の終わり
僕はただ君を探す

真っ白な、真っ白な世界地図
降り積もる雪のような君との調べ
その先へその先へ歩いてゆこう
新しい僕たちの地図を描こう

どんなに手を伸ばしても
君には届かない陽炎
誰よりも美しくて
誰も知らないアリス
君に恋をして時を止めよう

その夜も君がいない
何もない地図の上で
影さえも映らなくて
僕はただ名前を呼ぶ

あの夜の幻にはもう会えない
夢の中夢の中崩れてゆくよ
思い出もふたりの地図も真っ白なまま
君と出逢った記憶も溶けて消えるよ

今はまだ、真っ白な世界地図
降り積もる雪のような君との調べ
何よりも怖かった時の流れに
一瞬の記憶さえ失うことを

拒んでは拒んでは叫び続けた
そのうちに君の名前さえ忘れて
どこまでもどこまでも続く世界で
いつまでもいつまでも君を探そう

真っ白な、真っ白な世界地図
降り積もる雪のような君との調べ
どこまでもどこまでも歩いてゆこう
新しい僕たちの地図を描こう

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